先日の引退試合で、ジョン・シナは「タップアウト負け」を喫しました。
ネバーギブアップをスローガンとしてきた彼にとって、引退試合でのタップアウトはキャリアの終焉を物語る強烈な負け方。一部ファンからは批判の声が上がり、この結末を決定したHHHにも大ブーイングが起きました。
しかし、シナ自身は「これでいいんだ」と考えています。コーディ・ローデスのPodcast番組で、彼はあの試合と、あの一夜が自分にとってどれほど意味深いものだったかを噛み締めるように語りました。彼にとって、あれは「安らかな死」…。
美しいものを思い描いていたんだけど、あの日の夜は、俺の心と魂の中にあったものを遥かに超えていたよ。
観客席を増やすためにサイドランプ(入場花道の横にあるスロープ)を動かさなきゃならないほどで、花道を通るのが消防法に触れるんじゃないかってくらい、人で溢れかえっていたんだ。
これ以上は一人も入れない…。プロレス界によくある大げさな話に聞こえるかもしれないが、俺がなぜあんなに喜びに満ちていたのか、その舞台裏を伝えておきたいんだ。本当に、これ以上の観客は入りきらない状態だったんだよ。
最後の5分間。俺が常々説いてきたストーリー、ドラマ、そして観客との対話のすべてを注ぎ込んだ。最前列には愛する人たちがいて、モニターの向こうでは同僚たちが見守っている。俺たちはただスリーパーホールドをかけられているだけだったが、あの瞬間、俺たちは観客と対話をしていたんだよ。
実質的に最後の息を引き取る瞬間、俺は葛藤していた。天寿を全うするようなシナリオや、人生における別れの場面を想像してみてほしい。誰もが経験することだ。苦しみ、抗い、それでも人生で意味のあったすべての人に別れを告げるために、ギリギリまで持ちこたえるだろう。
あの日、俺は信じられないほど脆く、そして意味のある会話を何度も交わした。そして気づいたんだ。愛するすべての人と繋がることができた、肉体的にも絶好調だ、なら、今こそ最後の呼吸をする時だ、とな。
不謹慎な例えかもしれないが、あれは「この人物は安らかに息を引き取った」という感覚なんだ。俺たちは素晴らしい場所にいる、これからの未来も大丈夫だ、と確信しながらね。Tシャツの裾には「すべてを捧げた、すべてをありがとう」と書いてある。あの瞬間が、まさに安らかな旅立ちだったんだよ。
(Wrestling Observer)
あわせて読みたい

