2019年に旗揚げしたAEWは、同年10月からウィークリー番組「Dynamite」の放送をスタートさせました。業界最大手のWWEはDynamiteに対抗する形でNXTを裏番組に当て、これによりプロレス番組によるテレビ戦争「ウェンズデー・ナイト・ウォーズ」が勃発したのです。
WWEはAEWの存在を警戒し、契約が切れる選手たちに対して高額の再契約オファーを出して選手の囲い込みを図っていた時期もありました。この頃に再契約に合意した選手たちの中には、新型コロナウイルスのパンデミックが起きてからリストラされた選手もいます。
AEWは、WWEにとって久々に現れた「競争相手の候補」でした。団体の規模はWWEに遠く及ばず、Dynamiteの視聴者数はRAW & SmackDownよりも遥かに低いのが現実です。ただ、WWEの方法論とは異なるスタイルで成功を収めている団体の存在は、決して無視できないでしょう。
しかし、WWEの最高責任者ビンス・マクマホンは、AEWについて「かつてのWCWは競争相手だったけど、AEWはそうじゃない。WCWに近い団体はどこにも存在しない」と評しています。まあ、WCWはガチの戦争相手でしたからね……。AEWのクリス・ジェリコは、この発言について次のように語っています。
返す言葉としては、「俺たちもWWEを競争相手だと思ってない」だね。ビンスはスマートだな。
俺たちはWWEのことを気にしてない。最初からそうだよ。NXTのことも気にならなかった。NXTとAEWのテレビ戦争はNXTの完敗に終わったけど、あの頃にNXTをテレビで見たことは一度もなかったよ。どんなセグメントをやってるのかも知らなかった。一切だ。今のWWEのやり方は「ライバルが何をしているのかを注視する」というものだけど、俺たちはそうじゃない。リスペクトしてないわけじゃなくて、気にしなかったというだけのことでさ。AEWのこと、自分たちのストーリーや番組のことで精一杯で、他の団体が何をしているのかなんて気にする余裕がなかったんだ。AEWがうまくやれた理由はいくつかあるけど、「AEWに集中していた」というのはそのうちの1つだね。
NXTが裏番組になったことについて、AEWはどうすることもできなかった。もしだよ、もしビートルズの再結成がDynamiteの真裏で起きたとしても、俺たちには何もできないじゃないか。コントロールできるのは、俺たちのショーのクオリティだけなんだ。直すべき点を改善し、成果が出ていることに集中するよう、一生懸命努力した。そのおかげでAEWは成功できているし、レイティングも良くなったんだ。
だから、WWEは俺たちの競争相手じゃない。AEWは自分自身と戦っている。ビンスは本心とは逆のことを言ったのかもしれない、彼はAEWを競争相手だとみなしているのかも、と俺は思う。でも、それって本当に重要なことなのか?とも心の底で思っちゃうね。
WWEはWWEだ。数十億ドルものテレビ契約を結んでいる団体だよ。で、AEWもそうなることを目指してる。俺たちの視聴者がWWEを上回り、テレビ契約が数十億ドル規模になった時、その時にようやくたくさんの競争が起こるんだと本気で思ってるよ。俺たちは何かを自慢することのためじゃなくて、お金のために戦ってるんだからね。大事なのはお金だよ。その時が来たらどうなるか、楽しみだよな。
他の誰かのことを気にする余裕もないほど自分のことに集中する…。やろうと思ってもなかなかできないですよ。ジェリコや他のAEW関係者が本当にそういう状態だったかはわかりませんけど。
(ITR)