プロレス団体のファン同士がいがみ合ったり、敵対心を持つことは珍しくありません。日本でもアメリカでも同じです。
WWEとAEWの一部のファンは、「俺が応援している団体のほうが向こうよりも優れている」と考え、ネット上で意見をぶつけ合っています。新日本プロレスやROHで活躍していたレスラーたちが中心となって設立されたAEWには、ファンベースに「アンチWWE」的な意識があり、レスラーたちもファンを焚きつけるような発言を繰り返していた時期がありました。
4人の副社長…ヤング・バックス、ケニー・オメガ、そしてコーディ・ローデスの中で最もWWEへの対抗心が強かったのは、4人の中で唯一WWEでの活動経験を持つコーディで、彼は他の3人とは異なるベクトルで「革命」を起こそうとしていました。旗揚げ興行「Double or Nothing」でHHHを連想させる王座を破壊したことが、WWEという「権威」への反骨心から来るものだったのは明らかです。
2022年にWWEへ復帰したコーディは、コーリー・グレイヴスのPodcast番組「After The Bell」の中で両団体のファンの関係について言及しました。そこには、彼なりの後悔も伺えます。
時々思うんだ。ファンは俺たちのちょっとした「批難」めいた発言に自分自身を同化して、プロレスがエンターテインメントだということを忘れることがある。ただ、俺は部族主義(自らの集団の中に閉じこもり、外部を敵視すること)に加担してしまったから、そういう人たちを見ても必ずしも怒ることはできない。
俺がAEW時代に売っていたTシャツを燃やしているファンの動画がSNSで何日か話題になっていたのはユニークだったね。感覚としては、スポーツチームを去る時のような、新天地へ向かうためにホームタウンを去るような、そんな感じがした。それを見て心が折れることはなかったし、「俺がいなければAEWは存在しなかったのにな」なんて思ったりして、奇妙な感覚だったのも覚えているよ。もちろん、AEWはいろんな人たちがいたからこそ設立することができたんだけど、俺もその一人だからね。
空想と現実の境目を見失ってしまうことも多いプロレスのファンベースは、プロレスラーたちからも「有害だ」と批判されることがあります。なんとも実感のこもったコメントですね。