WWEを世界最大のプロレス団体に成長させ、この業界で最も強い影響力を持つ男、ビンス・マクマホン。
彼の手腕には常に賛否両論が飛び交うものの、団体を成功に導いていた実績は否定できるものではありません。彼のクリエイティブにおける才能は高く評価されており、それは彼の部下たちもよく理解しています。
WWEで長年に渡ってスター選手として活躍し、現在はAEWに所属するクリス・ジェリコは、ゲスト出演したPodcast番組「True Geordie」の中で、ビンスの才能について語りました。
彼はとても威圧的な人で、億万長者だ。あの巨大かつアイコニックな団体を作った男だよ。でも、彼の実際の姿は、誰かとたむろしたり冗談を言い合ったり、酒を飲むのが好きな「ヤツ」。まあ、みんなとは言わないけど、彼の周りにいるのはイエスマンだらけだよね。ああいう立場の人間はそういうものだけどさ。彼自身はイエスマンを求めていないし、俺は彼と本当にいい関係を築いていた。今は彼のために働いているわけではないから、昔と同じ感じとはならないけど、それでも俺がメールをしたら5分以内に返事をくれるよ。どんな時だってそうだ。
俺はビンス・マクマホンのために働くのが好きだった。俺に対してどのようにチャレンジし、プッシュするのか。そのやり方が大好きだったんだよね。「ビンスはダメだ」とか、「酷いブッカーだ」なんて意見を見聞きすると笑っちゃうよ。常に高得点を叩き出す人ではないけど、40年以上もこの業界でやっている人なんだからさ。40年も同じことをやるなんて想像できるか?
この仕事はとても難しい。それはもちろんだ。ただ、ビンスの何が素晴らしいって……彼の近くで働かないとわからないことではあるけど、彼はよくこう言っていた。「さて、俺はどうするんだ、ビンス?」と。自問自答した結果、「知らん。でも俺はこうするって決めちゃったから、あとはお前がうまくやれよ」って感じだったな。
で、だ。俺がアイデアを持ってビンスのところに行くとするだろ?完璧に練り込まれたアイデアを彼のもとに持っていく。今ここにあるボトルがそのアイデアだとしてみようか。「見てくれビンス、これが俺のアイデアだ。このボトルには水が半分入っていて、『Evian』と書いてあるぞ。絶対に儲かるって。俺にはわかる」と俺が言うと、彼はこのアイデアについて考えはじめる。
普通の人なら、そういう話になってから30秒も経てば、アイデアを出してきた相手と議論をしたり、考えを喋ったりしようとするだろう。でも、ビンスは違う。彼が考えている間はそっとしておくんだ。彼はくだらない話を聞くのを嫌がるからね。ただそこに座り、考える。30秒だろうが1分だろうが、考える。みんなの居心地はかなり悪いかもしれないけど、それでも彼は考え続ける。
そして、彼はボトルを手に取り、向きを180度回転させるんだ。誰かが思いついたときには「良いアイデア」だったものに「ひと工夫」加えることで、彼はそれを「素晴らしいアイデア」に変えてしまう。そこがビンス・マクマホンの天才的なところだよ。アイデアの発端や土台となるものを思いつかなかったとしても、誰かからアイデアを提案されたら、そこに「ひと工夫」加えてすごいものを作ることができるんだ。WWEの大ヒットのほとんどは、ビンスが加えたスパイスによって素晴らしいものになったんだよ。
1を100にする才能が団体のトップにいるからこそ、WWEは成長を遂げることができた…ということですね。あのクリス・ジェリコがビンスの凄さを熱く語っているということそのものが、ビンスの才能を物語っているとも言えるでしょう。
(Fightful)