5月13日号のAERAでは、新日本プロレスとROHの合同興行”G1 SUPERCARD”が特集されています。現地ファンのコメントや金沢克彦さんのコメントなど、読み応えのある内容でしたが、最も注目すべきポイントは新日本の菅林直樹会長のコメントではないかと思います。
菅林会長の構想
全盛をきわめる新日本をより成長させるにはどうするべきなのか?記事には次のように書かれています。
いまや、売り上げは過去最高になった。何度目かの「プロレスブーム」。その結晶こそが、このMSG大会だった。
だが、考え続け、行動し続けなければ、いずれは再び衰退してしまいかねない。菅林は、ファンの裾野を広げるため、日本の外に活路を見いだす。MSGでの興行は、「本格的な世界進出の第一歩」でもあった。[1]
記事の中で例に挙げられている世界戦略のポイントは3つ。
- 「逆輸入パターンをつくる」
- 2グループ化
- 選手のギャラ増加
ここでは、1, 2について触れたいと思います。
「逆輸入パターンをつくる」
ここでいう逆輸入とは、海外で選手を育成し、日本に送り出すことを指しています。例えば、2018年3月に復活したLA道場では、柴田勝頼がヘッドコーチを務め、3人のヤングライオンが鍛錬を重ねています。彼らはROHを始めとしたアメリカのインディ団体に出場し、将来の日本デビューに備えています。
また、記事内で「ひそかに」作られたと言及されているバッドラック・ファレ主催の「ファレ道場」(ニュージーランド)でも将来有望な若手がトレーニングを積んでいて、うち4人は既に新日本道場に加わっています。
そして、今後イギリスにも道場を作ることが検討されているようです。8月31日に開催されるイギリス興行で何らかの発表があるかもしれませんね。
オセアニアとイギリスは、WWEも本気で市場開拓に取り組んでいる地。世界進出に力を入れる予定のAEWも今後着手するかもしれません。プロレス界の争いが本格的にグローバル化しそうです。
2グループ化
菅林会長は、新日本もWWEのように2グループ化することを検討しているようです。宝塚歌劇団を例に挙げ、
もちろん大きなイベントは一緒にやるが、原則は別々に行動するようなイメージ。[2]
と説明しています。選手の負担増対策としての2グループ化構想とのことですが、1つは国内で、もう1つは海外で興行を打ち、役割をローテーションさせることで海外での活動をより活発にできるという狙いもあるのかもしれません。
WWEには現在5つのブランドがあります。メインはRAWとSmackDownで、NXT、NXT UK、205LIVEは下部ブランドという位置づけ。新日本にもこうしたピラミッドができるとすれば、世界各地で腕を磨くヤングライオンたちがメインの2グループ入りを目指す、という形になるんでしょうかね。
G1開幕戦・イギリス&オーストラリア興行を成功させられるのか
5月10日時点で発表されている新日本の今後の海外興行は次の3つ。
- 6月30日 NJPW SOUTHERN SHOWDOWN in SYDNEY(オーストラリア)
- 7月6日 G1 CLIMAX29開幕戦(アメリカ)
- 8月31日 NJPW Royal Quest(イギリス)
去年2月のオーストラリアツアーでの成功をさらなる発展に繋げたいオーストラリア再上陸、チケットの売上が大苦戦していると報じられているG1開幕戦、道場設立の足がかりになるかもしれないイギリス興行。2020年は東京オリンピックの開催によって海外興行が増えると予想されています。新日本にとっては、これら3つの興行をなんとか実りのあるものにして、2020年に望みたいところです。
あと、AERAの記事は本当に面白いのでぜひ読んでください。最後に書かれているMSGの警備員の話は最高です。
引用
[1] 「新日本プロレスにマディソン・スクエア・ガーデン熱狂」, AERA2019年5月13日号, p.52, 朝日新聞出版
[2] 同上
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