新日本プロレスとROHの合同興行”G1 SUPERCARD”でスターダムのアイコンこと岩谷麻優とWOH王座のタイトルマッチを行ったケリー・クラインという女子レスラーのことを覚えていますか?彼女はあの試合で同王座を獲得して以来、一度は防衛に失敗したものの、すぐにタイトルを取り戻して防衛を続けてきました。しかし、報道によれば、彼女は団体から事実上の解雇通告を受けたのです。一体何があったのでしょうか?
ケリー・クラインへの解雇通告
クラインの夫で、AEWのプロデューサーを務めるBJホイットマーは、SNSで次のようにコメントしています。
もう秘密がバレてしまったか。そうだ、私の妻はROHのCOO(ジョー・コフ)によって解雇された。火曜日にメールで連絡を受けたよ。電話じゃなくてメールだ。ケリーは今も脳振盪後症候群に非常に苦められていて、怪我も残っている。でも、解雇されたんだ。
メディアからの取材に対し、ROHは次のように返答しています。
普段はこの手の問題について言及しないんですが、公になっているようなので。我々はケリーを解雇したわけではありません。ただ、現在の契約が切れた時、再契約はしないと通知しました。この契約は年末までのものです。
現役王者が解雇されるなんて、そうそうあることではありません。しかも怪我や脳震盪の後遺症で苦しんでいるレスラーに対し、随分とドライな態度です。
実は、クラインが解雇されたその背景には、ジョーイ・マーキュリーという男の告発が絡んでいる可能性が高いのです。
ジョーイ・マーキュリーの告発
2018年からROHで裏方として活動してきたマーキュリーは、2019年11月1日に団体を去りました。その後、彼はROHが抱える問題点を告発し、話題を集めていたのです。
彼の告発の内容は以下のようなものでした。
- セキュリティ不足。ブッカーのブリー・レイがファンを恫喝したという事件があったのは、ROH側がセキュリティを用意しなかったことが原因。
- 医療スタッフ不足。先日のイギリス・ツアーでジェイ・リーサルが骨折した際、GMのグレッグ・ギルランドは不在で、リーサルを世話することは優先事項にされなかった。
- 脳震盪に関するプロトコルが存在せず、それゆえにイギリス・ツアーで脳震盪を起こしたケリー・クラインがツアーの終了後に試合をするために南アフリカへ送られてしまった。
- レスラーとのコミュニケーション不足。シェイン・テイラーは来年1月1日で切れる契約が更新されない方針であることを知らされなかった。
この他にも、マーキュリーはクラインの許可を得た上で彼女とギルランドが交わしたメールを公開し、その中でROHとレスラーが交わしている契約書の問題点についての両者のやりとりを暴露しています。中でも話題になったのは、ROHと契約しているすべての女子レスラーが24,000ドルの契約を結んでいる、もしくはこの金額が上限である可能性があるという点です。低賃金な上に上限があるというのは不公平ですし、女子レスラーにとって明らかに不利な団体であるという印象を受けてしまいます。
この他にも、団体側には30日前に通知すればいつでもレスラーとの契約を終了できる権利があるものの、レスラー側にはこうした権利がないことや、ロイヤリティの不公平さなどをクラインは訴えています。
この告発があった後、クラインはマーキュリーの告発を支持する発言をTwitterに投稿しました。一方、ROHは「我々はファミリーだ」ということをアピールする写真をTwitterに投稿しました。この中にクラインはいません。
クラインはそれほど評価の高いレスラーではないので、契約を更新しないという決断自体は理解できます。しかし、こうした経緯があった後での「メールでの」解雇通知はドライすぎる。ファミリーという言葉には温かいニュアンスがあります。しかし、その一方で、ファミリーではない人物に対する態度は異なるんだということを示す言葉でもある。クラインはファミリーではなかったのでしょう。その理由は何でしょうね?
(PWS, Cageside Seats)