WCWを率い、WWEとマンデー・ナイト・ウォーズを演じていたエリック・ビショフ。
90年代のプロレス界を盛り上げたビショフは、WCWと比較されることも多いAEWについて、時に厳しく批判しながら見守ってきました。話題になった指摘として、「AEWはストーリーテリングの基本を理解していない」というものがありました。2022年3月、ビショフは「AEWは短期的なインパクトを重視し、長期的なストーリーテリングを軽視している」と指摘。これには多くのファンから賛否両論ありました。
ただ、AEWと縁遠いというわけではなく、2020年にはクリス・ジェリコとオレンジ・キャシディの抗争に関与する形でDynamiteに出演。その後もジェリコ関連のストーリーに何度か登場しています。コンテンツに関与しながらも、適度に距離をとって批評する。ビショフはそういう距離感でAEWと接してきました。
しかし、彼自身はAEWとの関係に悲観的です。Podcast番組「MackMania」にゲスト出演した彼は、「AEW社長のトニー・カーンはもう俺をショーに招待しないだろう」と発言。AEWに対して批判的な発言をしていることがその理由だという推測のもと、団体が成長することがいかに大切か、視聴者数が伸びなくなったDynamiteがいかに危険な状態にあるか、という自論を展開しました。
俺はAEWのケツを叩いてきた。おそらく、トニーは俺のことを「ケツの痛みの1つ」だと思っているかもしれないな。俺はもうAEWのショーに呼ばれることはないだろう。まあ、別にいいんだけど。少し悲しいけど、理解したよ。個人攻撃だとは思ってない。
ただ、俺はAEWについてはもう1年以上前からいろんなことを指摘している。彼らのDirt Sheet的なブッキングアプローチや、インターネットの意見を反映したブッキングに警鐘を鳴らしてきたんだ。もし団体や番組のレイティングが向上しないのであれば、それはコンテンツが死んでいるということだよ。
トニーとワーナーメディア(Dynamite & Rampageを放送しているテレビ局の親会社)のテレビ放送に関する契約は、あと1年半から2年ほど残っている。ワーナーはディスカバリーとの合併を完了させ、デービッド・ザスラフという新しい保安官(CEO)が街にやってきた。TBS(Dynamiteの放送局)の土地はすべて彼のものだ。
もし、テレビ局を買収した人が番組表を見るならば、そこから得られる収入について調べるだろう。金儲けのためだ。俺の疑問は、「よし、俺たちはビーチが目の前にある物件を手に入れたぞ。ゴールデンタイムにも番組を放送できる。水曜日の夜の状況はどうなっているだろう?」と考えた時、ザスラフがどうするか、ということでね。まあ、Dynamiteは視聴者数が増えているわけではないし、「TBSでの放送は1月に始まったばかりだから、もう少し様子を見よう」と判断するかもしれない。
別の見方をしてみよう。「新規ファンを呼び込む魅力は増えているか?」を考えよう。[…]ビーチを目の前にした物件が、視聴者も増えず、魅力も増していないのなら、それはツーストライクだよね。広告営業部の立場になって考えよう。この番組の広告販売の状況はどうなっているだろうか?広告の収益はどれくらいだ?高額か、中くらいか?[…]多くの場合プロレスと広告の関係はちょっと厳しいから、こういう考え方も必要だ。
さて、こんな答えが返ってきたらどうだろう。「まあ、なんとかやっているし、広告へのリアクションもあるけど、大した額の広告販売ではないし、視聴者も増えていないし、魅力も増していないよ」なんてね。こうなってしまったら、かなり不利な状況だ。外部から誰かがやって来て、ゴールデンタイムの番組のテコ入れをしようかどうかを決断する時、その決断にどう影響するだろう?成長は本当に大事なんだよ。
Dynamiteの視聴率は100万人程度で推移することが多くなっています。2020年までは平均70〜80万人台でしたが、2021年に多くの大物レスラーと契約して団体が軌道に乗ると、ミリオン達成も珍しくはなくなりました。とはいえ、この程度の数字で停滞するようであれば、団体や番組の未来はない。将来性を考えれば、長期的なストーリーテリングは重要なんだ……というのがビショフの考え方なのでしょう。
団体を成長させるためには何が必要なのか?トニーの手腕はプロレスファンから高く評価されており、ワーナーメディアもAEWに満足しているとされています。さらなる高みを目指すため、トニーには今以上の頑張りが求められるのです。