プロレス界にはたくさんの「チャント」があります。掛け声ですね。選手に対するもの、番組やイベント、団体に対するもの…。日本では選手名のコールが多いですが、海外ではメッセージ性の強いものも多い、という特徴があります。「This is Awesome!」や「You Suck!」、「You can’t Wrestle!」とか。
定番チャントの1つに「You Deserve It!(ふさわしいよ!当然だ!)」があります。タイトル獲得やタイトルへの挑戦権を得ることなど、選手にとってポジティブな出来事があると、ファンがそのことを祝福する目的でこのチャントを叫ぶのです。上の動画にもあります。
ポジティブなチャント。とはいえ、すべてのレスラーが好意的に受け取っているわけではないようです。WWEのサミ・ゼインは、このチャントへの複雑な思いを持っているそうです。
そうかな?資格はみんなにあるんじゃない?[…]「俺は頑張ったんだからそれにふさわしい」とは思えない。だって、みんな頑張ってるじゃん。例外もいるけどさ。
俺の人生は素晴らしいけど、そうじゃない人はたくさんいる。このことについての考え方が、「You Deserve It」への複雑な思いにつながっている、というのがゼインの主張です。
(俺が恵まれているのは)俺がそれにふさわしいからじゃない。それが重要なんだ。他の人よりもそれにふさわしいなんてことはない。要は「運」なんだと思ってるよ。そうそうそう…俺は一生懸命やってきたよ。何に対しても懸命に取り組んできた。誰だって一生懸命だ。そして、ご存知の通り、俺はプロレスがめちゃくちゃ上手い。みんなが俺レベルのプロレスをできるわけじゃないよ。そして、一生懸命努力したからといって必ずチャンスを掴めるわけじゃない。でも、俺には幸運が訪れたんだ。
俺に「ふさわしい」と言うのはもうやめてくれ。聞きたくないよ。「You got lucky!(ラッキーじゃん!)」のほうがいいな。その方が正確だし、良いチャントだよ。俺がWWE王座を勝ち取ったらそう叫んでくれ。You got super lucky!
なんというか、ゼインらしい考え方だなと思いました。才能があるのも運、あの時にプロモーターからブッキングされたのも運、タイトルを手にしたのも運…。「努力したのに報われない、ふさわしい存在なはずなのに」と思ってしまうよりも、「運がなかったな」と思う方が気が楽ですよね。あんまり続くと辛いですけど。