2019年に旗揚げしたAEWが順調に成長する中で、WWEはプロレス界の絶対的立場を維持できるでしょうか?
プロレス界の中心がWWEなのは言うまでもありません。これまでも、現在も、これからもそうでしょう。コロナ禍にもかかわらず、SummerSlamには5万人を超える観客が詰めかけました。大盛況のAEW「ALL OUT」の観客動員数は約1万人でしたから、人気の差は歴然です。他団体とは、積み上げてきた歴史、実績が違います。知名度は世界規模で、ワールドツアーには多くのファンが集まります。話題を取り上げるメディアの数も多く、WWEから他ジャンルに羽ばたく選手たちもいます。多くの人たちにとって、プロレスといえばWWEです。
ただし、現在のAEWが凄まじい爆発力を見せていることも事実です。ALL OUTではCMパンクの復帰戦が行われ、ブライアン・ダニエルソンが登場しました。元WWEのビッグネームが話題になったイベントでしたが、メインイベントで勝利したのは新日本プロレスで名を売ったケニー・オメガ。最も評判の良い試合はヤング・バックスとルチャ・ブラザーズのタッグマッチです。「元WWEの大物を有効活用しながらWWEとの違いを効果的にアピールしている団体」というのがAEWの特徴でしょう。
WWEのレジェンドレスラー、ミック・フォーリーは、Facebookにアップロードした動画の中で「WWEはもはやレスラーが目指す場所ではなくなった」と指摘しています。
このビデオのタイトルを「WWE, We’ve Got a Problem」としたいのは、WWEはもはやレスラーが目指す場所ではなくなったという問題があるからだ。AEWが素晴らしい選手や実績のある選手を獲得し、スターを育て、ストーリーラインを作るという素晴らしい仕事をしているのも影響しているだろう。だが、これはWWEが自分自身で作った問題でもあるんだ。若手は見ているよ。発展途中のキャラクターがカットされたり、放置されたりするのを見ている。メインロースターになったカリオン・クロスが骨抜きにされ、ジョークにされている様子を見ているんだ。壊れてないなら手を加えるな。
もし、俺が将来有望な選手で、これから大きな決断を下そうとしているとするなら、「WWEのクリエイティブは俺のキャリアにとって正しいことをしてくれる」と信じられるだろうか。かつて、WWEは俺にとても素晴らしいことをしてくれた。でも、その時とは時代も状況も違う。仮にあの時の状況が今訪れたとしても、俺のキャリアをWWEの上層部に任せられるはないよ。変化が起こるまで、WWEは問題を抱えたままだ。
この意見は賛否両論を巻き起こしています。かなりはっきりと意見が分かれている印象です。同意する人、WWEの規模や歴史を持ち出してAEWを否定する人、「ミック・フォーリーはAEWに行きたいのか」と揶揄する人…。本筋から逸れて、「WWEはどのような状況になったら変わるのか」を語り合うファンもいました。
WWEがAEWに逆転される……そんなことが起こる可能性は低いでしょうし、仮に起きたとしても、それは遠い未来の話でしょう。ただ、AEWの躍進によってWWEの「ブランド価値」が相対的に低下する可能性を指摘するファンもいます。ここで言う「ブランド価値」とは、フォーリーが指摘している「プロレスラーからの評価」ではなく、よりビジネス的な側面を指しています。つまり、AEWの躍進以前と比べてテレビ局との契約金額が少なくなってしまう、というような影響です。
WWEにはナンバーワンであり続けてほしいと思いますが、もし上記のような影響が浮き彫りになった時、WWEの上層部はどのような行動を起こすのか?ちょっと興味あります。
(SESCOOPS)