2019年に旗揚げしたAEWは、2020年末から2021年にかけて大きく成長しました。クリスチャンやCMパンク、ブライアン・ダニエルソンといった超大物が入団したほか、ダービー・アリンやMJFら若手選手が順調に成長し、女性部門にはブリット・ベイカーという自然発生的なスターが誕生しました。もちろん、ケニー・オメガがAEW世界王座のチャンピオンとして活躍していることも大きいでしょう。
AEWのオーナーを務めるシャヒド・カーンは大富豪として知られ、NFLジャクソンビル・ジャガーズとイギリスのサッカーチーム、フラムFCのオーナーでもあります。彼の息子で、彼と共にスポーツビジネスに携わってきたトニーはAEWで社長として活動し、ここ最近のプロレス界で最も強い影響力を持つ人物の一人になりました。
WWE出身の大物が何人もロースターに加わった2021年、団体の人件費は以前よりも確実に増えました。成長するなら今、投資するなら今だとばかりに大金を注ぎ込んでいる状態です。もっとも、トニーは「AEWにはロースターの人数への制限やサラリーキャップがないから、誰と契約し、ロースターをどこまで拡大させるかはほとんど私の裁量に任されている」と発言しているくらいなので、カーン一族にとっては大したことではないのかもしれません。
しかし、プロレス業界最大手のWWEは、AEWのこの点にこそ問題があると考えているようです。レスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーによれば、WWEはAEWについて「長い目で見れば投資額が高額すぎて、結果的に大金を失うことになる」と見ているとのこと。トニーが団体の旗揚げにも大金を注ぎ込んだことから、現在のAEWの成功をそれほど評価していないのだそうです。
一方で、WWEは常に利益を出し続けなければならないのに対し、カーン一族がバックについているAEWにはそうした制限がなく、多額の投資をすることができることについて「不公平だ」という意見もあるとのこと。
超強力なスポンサーがついているAEWはそれだけで強いですね。ちなみに、WWE内ではWCWのテレビ戦争「マンデー・ナイト・ウォーズ」で敵陣のボスだったタイム・ワーナー社元副会長のテッド・ターナーの評価が高いようで、「テッド・ターナーはトニー・カーンより賢い」という認識が団体内に浸透しているとのこと。ターナーはCNNの創業者なんだから、そりゃそうでしょ……。
(Wrestling Observer, Cultaholic)