2022年4月、ワーナーメディアとディスカバリーの合併が完了しました。巨大メディア・コングロマリットの内部では大きな変化が起こり、ワーナーメディアの上層部たちが相次いで辞任。今後はディスカバリー出身のデビッド・ザスラブがトップとして企業を率いることになります。
AEWはワーナーメディアとの間に2023年末までのテレビ放送契約を結んでいます。AEW社長トニー・カーンとワーナーメディアは良好な関係を築いており、トニーが買収したROHの新番組に関するポジティブなムードもあるとされていました。しかし、合併による変化が、この関係を不透明にしてしまうかもしれません。
ワーナーメディアの幹部に取材したレスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーは、現在の契約がキャンセルされる可能性は低いものの、2024年以降も契約を継続できるかどうかは別問題とのこと。
ワーナーメディアを所有する米大手通信会社AT&Tがディスカバリーとの合併を狙った理由の1つに「コスト削減」があるとされ、その効果は30億ドルほどになることが期待されています。2022年3月末、ワーナーメディアは有料のストリーミングサービス「CNN+」を立ち上げましたが、新たな経営体制下で「コスト削減」の対象となり、事業は閉鎖されることになりました。
また、Dynamiteを放送するTBS、そしてRampageを放送するTNTは、コスト削減のために新しい脚本ありのコンテンツを制作しないことを発表したばかり。こうした傾向を、メルツァーは「AEWにとって良い兆候ではない」と指摘しています。
Dynamiteはレイティングが優秀で、水曜日にケーブルテレビ局で放送される全番組の中でもトップクラスの視聴率を稼いでいます。また、テレビ局側のコストも低く、「お手頃な資産」という一面があります。しかし、シビアな世界ですから、何が起こるかわかりません。レスラーたちが活動しやすい条件を得られるのであれば、他の放送局との契約を探すのも手でしょう。
放送されるテレビ局を移動することは前例がないわけではなく、2019年にSmackDownがNBC系列のUSA NetworkからFOX系列のテレビ局へ移動したこともあります。とはいえ、現在のAEWがワーナーメディアとの契約によって得られているリソースと同等のものを移動先でも得られるかどうかはわかりません。
(Wrestling Observer, Cultaholic)