海外のプロレス界では、その裏側をファン向けに報じるDirt Sheetというメディアが複数存在し、虚実入り乱れた非常に複雑な世界であるプロレスをファンが楽しむのに欠かせない役割を果たしています。
その中でも、デイブ・メルツァーはDirt Sheetを代表する存在。1959年生まれ、現在66歳の彼は最初のDirt Sheetとされるニュースレター、レスリング・オブザーバーを1982年から配信し続けています。現在もその影響力は計り知れないものがあり、世界中の団体で行われる試合を5段階評価するレビューは(賛否両論あるものの)ある種の「指標」となり、2010年代に高評価を連発した新日本プロレスが海外人気を獲得していくことにも貢献しました。
I met @davemeltzerWON . We recorded podcast! pic.twitter.com/RecsOtKXdo
— 棚橋 弘至 (@tanahashi1_100) July 6, 2018
こうしたDirt Sheetの存在は、プロレス団体にとっては疎ましいものという側面もあります。知られたくない情報を報じられたり、ネガティブな評価を広められたり…。その一方で、プロレス界全般の知識を持つ彼らをクリエイティブチームのメンバーに招き入れたいと考える団体もあります。
現地11月1日配信のレスリング・オブザーバーのラジオ番組で、メルツァーは以前WWEからライターとしてのオファーがあったものの、それを断ってたことを明かしました。
即座にオファーを断ったよ。俺がやりたいのはスポーツライターだから。みんなから「君はブッカーやプロレスラーになりたくなかったの?」なんて聞かれるけど、そういうものには一切なりたくなかった…俺はライターになりたかった。だからそうしたんだ。
また、2008年にレスリング・オブザーバーと合併したフィギュア・フォー・ウィークリー主宰のブライアン・アルバレスにも過去にWWEからオファーがあり、「あなたのクリエイティビティを我々のバックステージでも活かしてほしい」と打診があったそうです。WWEがこの2人にオファーを出したのは、そのスキルを評価していたのはもちろん、影響力の大きなDirt Sheetを潰したいという意図もあったかもしれません。
しかし、結果として2人はWWEを含む世界中のプロレス団体を外部から報じるジャーナリストの立場に留まりました。もし2人がWWEからのオファーを受けていたら人生は大きく変わっていたでしょうし、今のようなDirt Sheet界もなかったでしょう。
(Wrestling Observer, Inside The Ropes)
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