プロレス界の裏側を扱うメディア、通称”Dirt Sheet”の代表的存在であるレスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーは、プロレス界でも最も特異な人物の1人です。詳しくはDropkickによるメルツァーと親交のあるフミ斎藤氏へのインタビューを参照していただきたいのですが、とにかく変人です。
――デイブ・メルツァーは伝説上の人物っぽいところもありますねぇ。フミ 『オブザーバー』の年間定期購読料は130ドル。週に一度郵送されてきます。いまはウェブ版(年間購読料200ドル)もありますが、内容はA4版の文字だけの20ページ。読みきれないうちに次号が郵送されてくるほどのボリュームなんですが、これはデイブ・メルツァーひとりで書いているんです。――あっ、デイブ・メルツァーひとりのライティングなんですか!フミ とんでもなく凄いことですよね。創刊から35年間、毎週毎週デイブ・メルツァーひとりの手で発行を続けているんです。ウェブサイトやポッドキャストはブライアン・アルバレスというメルツァーの弟子みたいな方がやってるんですけどね。――35年間書き続けるってホントに怪物だ(笑)。
メルツァーの発言はなにかと話題になります。AEWの前身となったCody & ヤング・バックスの自主興行”ALL IN”開催も、メルツァーによる「ROHでは1万人規模の会場を完売させられないだろう」というツイートがきっかけでした。
こうした発言や、ファンに伝えられるプロレス界の裏側だけでなく、試合やイベントを5つ星で採点するレイティングもよく話題になります。海外で新日本プロレスの人気が高まった要因の1つには、2010年代に入ってからメルツァーが新日本の試合にファイブスター・マッチやそれに近い評価を付けることが増えたという事実もあると思われます。棚橋弘至も自らのPodcast番組でメルツァーから高く評価されたことについて好意的に語っていたことがありましたね。
WOR: NJPW legend Hiroshi Tanahashi https://t.co/zl8u2aN8oG pic.twitter.com/3A5S9bQgBZ
— Wrestling Observer (@WONF4W) July 7, 2018
現役レスラーたちは、彼が試合を高く評価してくれること、そしてその影響力についてどう考えているのでしょうか?NXT UKのウォルターは、インタビューでこう語っています。
批評家は常に自分の意見を述べる。デイブ・メルツァーは長年そうしてきて、その意見は多くの人々から高く評価されている。彼がそういう風に考えるのはいいことだと思うよ。(2017年にザック・セイバー・ジュニアとの試合で)はじめてファイブスターが付いた後、そのことがインディ界では手助けになったね。多くのプロモーターが俺のことを知ってくれたから。そういう意味では良い面もあるけど、個人的にはそれほど重要だとは思ってない。
彼はプロじゃないし、何年もリングに上がっていないだろ。だからプロレスに対して違った視点を持つことができるんだ。彼は自分の意見を示しているが、プロとしての分析はできない。批評やフィードバックに関しては、経験を積んでいるレスラー、自分が尊敬しているレスラーとの会話の中から結論を出しているよ。彼のような人々の意見や仕事に対する姿勢には、ありがたいな、と思ってる。もちろん、誰かが俺の仕事を正しく理解してくれたり、そのように評価してくれるのは嬉しいことだね。