WWEの最高責任者ビンス・マクマホンは団体内で最も強い発言権を持っています。彼が「ダメ」といったらそれはダメ。番組の放送開始があと数時間後に迫っているような状況でも、その日の台本が気に入らなければ、すべて書き直させることも厭わない男です。
一方、CMパンクやブライアン・ダニエルソンの加入で勢いづいているAEWでは、社長のトニー・カーンがクリエイティブとブッキングの最終決定権を持っています。
AEWはレスラーたちのプロモの台本がWWEほどガチガチに決まっているわけではありません。レスラーたちには内容の要点だけが伝えられ、それ以外はある程度個人のセンスに委ねられているようです。しかし、カーンがすべての番組の編集責任者を担当しているため、彼の意志から大きく逸れるような内容は基本的に放送されません。
クリエイティブ・ブッキング・編集を司るリーダー。彼の仕事ぶりについて、ジョン・モクスリーは次のように語っています。
AEWの雰囲気はパーティみたいだよ。「自分たちはプロレスファンだ」という自覚があるし、ファンと素晴らしい関係を築いている。彼らは、俺たちがファンを裏切ったりしないし、金儲けのことだけを考えているわけじゃないということを理解してくれているね。ファンはただの顧客じゃないし、飯の種でもない。俺たちに共通しているのは「プロレス愛」だ。
トニー・カーンは様々な時代・スタイルのプロレスを愛している。いろんなことに詳しいし、レスラーが自分自身の才能を発揮させている姿を見たいんだ。だから、ヤング・バックスとルチャ・ブラザーズの試合をブッキングした彼自身も「試合を見るのが待ちきれない」と思っているんだよ。レスラーに細かな指示を出すこともない。「よし、君たちのパラメーターを決めるよ。スーパーキックの回数は13回までだぞ。それ以上やってみろ、俺がヘッドセットで『お前らスーパーキックやりすぎだよ!』と叫ぶことになるぞ」とは言わない。彼が言うのは、「自分の仕事をしてきてくれ」だけだ。それがリーダーの本来あるべき姿だろ。
プロデューサーやライターのような「物事をコントロールするのが仕事の人たち」とか、番組の出演者がレフェリーやファンに語りかけてくれる。パフォーマーは自分の仕事をするだけでいい。それがAEWだ。しばらくプロレスから離れていた人たちがAEWを見たら、まったく別物だと思うだろうな。最高にクールなことだ。この団体には、スポーツ・エンターテインメントやドラマが好きな人だけじゃなく、どんな人でも少しは楽しめる要素がある。様々な要素が少しずつ組み合わせられているからね。激しさや暴力性のあるフィジカルな試合もあるし、狂ってるハイ・フライ・アクションもあるし、極めて革新的かつドラマチックで狂っていて興奮させてくれるタッグチームもいる。女性戦線たちは信じられないほど才能あるレスラーでいっぱいだ。すべてが揃っている。プロレス団体はこうあるべきだ。
プヲタの鑑ですね。