AEWにとっての2025年は、国際戦略を実行に移す重要な年になっています。2月にはオーストラリア大会、そして6月にはCMLL協力のもとでメキシコ大会を成功させました。
今回のメキシコ大会Grand Slamはアメリカのファンからも注目度が高く、テレビ放送の平均視聴者数は70万人台を突破。ショーの評判も上々でした。特に大きな注目を集めたのは、英雄ミスティコとMJFのシングルマッチだったようです。
このショーでは、ビースト・モルトスとCMLLの和解という重要なシーンがありました。2008年から2011年までCMLLに在籍した彼は、在籍中にAAAのトライアウトを受けて移籍するというCMLLへの不義を働いており、両者の関係は決して良くありませんでした。しかし、クラウディオ・カスタニョーリの欠場により代役が必要だったAEWはCMLLと交渉し、彼のアレナ・メヒコ復帰を実現させたのです。
しかし、その裏で、どうしてもCMLLへの復帰が叶わなさそうな2人のルチャドールがいます。ルーシュとドラリスティコです。
CMLLへの不義
2019年、当時CMLLの人気者だったルーシュは、弟ドラゴン・リーと共にCMLLの設立86周年記念大会と同日に開催されたROH・Death Before Dishonorに参加し、ROH世界王座を勝ち取りました。CMLLは自団体の特別な大会よりもROHへの出場を優先した2人の姿勢を問題視し、解雇。2人はCMLLから独立しました。
もう一人の兄弟であるドラリスティコ(当時は3代目ミスティコ)は2021年までCMLLに残りましたが、結局は退団してAAAやAEWに参戦しました。
ルーシュの新団体設立と引き抜き疑惑
2021年、ルーシュはFederation Wrestlingという団体の設立を試みました。CMLLは、この時にルーシュが自社の有力選手を引き抜こうとしたと考えています。
実際に移籍した選手はいませんでしたが、CMLLはこれを人材略奪の試みと見なしており、「ルーシュは悪影響を与える存在で、再び資金提供者を見つけて人材引き抜きを試みることを防ぐため、CMLLの選手たちの周りにいてほしくない」と考えている、とされています。
解決の道は見えず
レスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーによれば、ルーシュとドラリスティコは、AEWを通してCMLLに「出禁」の解除を働きかけています。特にドラリスティコはミスティコとの因縁再開を求めており、これはCMLLにとっても興行的価値のある争いになるはずです。
しかし、CMLLは2人の復帰まったく考えておらず、特にルーシュに対して「他団体がCMLL所属選手を引き抜くきっかけを作った」と強く非難しているといいます。また、ドラリスティコもこうしたCMLLの方針を尊重し、「本音では、アレナ・メヒコでLa Facción Ingobernableの旗を振りたいよ。でも、今は無理だね」と語っているそうです。
彼らが再びアレナ・メヒコのリングへ上る姿を見たいファンは世界中にいるでしょう。しかし、こうした事情がその実現を難しくしているのもまた事実です。和解の日は来るのでしょうか…。
(Wrestling Observer, Wrestling Inc)
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