かつてはファミリー向けのビジネスをしていたWWEですが、現在はファミリーが気軽に楽しめるコンテンツではなくなりました。時代の変化を生み出したのは、親会社TKOです。
かつてWWEを仕切っていたビンスはファミリー層を非常に重視し、ショーのチケット価格もコア層である観客たちが気軽に楽しめる水準でした。しかし、彼が主導して2024年にUFCの親会社エンデバーに団体を売却し、親会社TKOの傘下企業となった後はチケット価格が一気に高騰。今や、庶民が気軽に購入できるような金額ではなくなりました。
レッスルマニア41のチケット価格は過去最高レベルの高額で、アリーナの最前列は5万ドル(約740万円)。両国国技館で行われる日本ツアーでも、アリーナ席が5万円、スタンドS席が3万円、マス席は7万円という価格設定です。先日、TKOのマーク・シャピーロCOOが「ビンス体制ではチケット収益の最大化が不十分だった。もっと価格を上昇させる余地はある」と発言したことで、一部のファンから批判の声が上がっていました。
この状況は、選手たちにとっても必ずしも良いものとは言えません。ランディ・オートンがレッスルマニア41のチケット価格のインフレに「恥ずかしい」とコメントしたように、かつてWWEで活躍したマット・ハーディーもTKOの方針を疑問視しています。
ビンスだって、できるだけ金を稼ぎたかったんだ。それは間違いない。でも、TKOほど多角的ではなかったね。
ジョン・シナの引退試合の舞台がワシントンDCに決まった件も、どうなんだろう?本来なら、彼自身も慣れ親しんだ土地でやりたかったと思うけど、結局はワシントンが何処よりも開催費用を負担してくれるからワシントンでやることになったらしい。
ビンスはもっとファミリー向けのビジネスをしていたよね。親子でショーを観戦してほしいと考えていたし、「観客から可能な限り搾り取ってやろう」なんて思っていなかったよ。彼なりに、妥当な金額を設定して会場を埋めていたんだ。親たちに、子どもを連れてきてもらいたかったんだよね。
過激なAttitude EraからPG Eraに移行したもの、コンテンツの内容をゆるくして子どもたちを引き込むためだった。子どもが「行きたい!」と言えば、親が連れて行く。それがWWEのビジネスだったんだよ。
でも、TKOは利益の最大化だけを追求しているように見える。今のWWEは絶好調だから、この高級路線もうまくいってる。だからこそ、クリエイティブを最高の状態に保ち続けなければならないんだ。観客が高額を払ってでも見たいと思う魅力的なストーリーやキャラクターを作らなければならない。もしそうでなければ大問題になるだろう。
今は心配ないよ。ファンは今のWWEに熱狂していて高額でもチケットを買う気でいる。ただ、数年後にこの勢いを維持できるかは分からない。2年後、3年後、この戦略が裏目に出る可能性もある。今後の推移を見守るのは非常に興味深いね。
富裕層は、高額なチケットを買うのに躊躇しません。しかし、普段NetflixなどでWWEの番組を楽しんでいる世界中の子どもたちが、どんなに望んでもショーを現地観戦できないような状況は、ビンスにとっても喜ばしいものとは言えないでしょう。WWEは変わりつつあります。
(Inside The Ropes)
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