WWEが生成AIをクリエイティブに活用する…という報道は、プロレス界の未来を左右する重要な話題です。
先日、WWEはサイラス・コウサリという人物をクリエイティブ戦略担当シニアディレクターとして雇用しました。レスリング・オブザーバーによれば、彼には「AIベースのストーリーテリングへの移行、および動画やグラフィックなどのクリエイティブ・サービスへのAI統合を主導する」という責務があるといいます。
しかし、この報道の後、Fightfulが「WWEはストーリーテリングなどのクリエイティブに生成AIを活用しておらず、あくまでアシスタントとして使っている」と報じ、あるトップ選手が生成AI主導のストーリーラインという相手に異議を唱えた…としました。とはいえ、団体内部で生成AIへの恐れが広まっているのもまた事実のようです。
レスリング・オブザーバーの最新情報によれば、WWE上層部は生成AIに関する報道が大きな注目を集めたことに不満を持っているものの、将来的にAIがクリエイティブのプロセスに統合されるのは事実とのこと。HHHはライターチームに「AIが君たちの仕事を奪うことはない」と保証している一方で、「今はそうかも知れないが、いずれ取って代わられるのでは」という懸念も存在するといいます。
現場からHHHの発言に対する信頼が低下している背景には、SummerSlamに向けてセス・ロリンズが実行した負傷アングルで上層部が現場に正確な情報を与えなかったことにより、団体内部さえも「彼は本当に負傷しているのか?」と混乱したことがあるといいます。
今や現場では選手の負傷に関する情報は内部でも一切信用されていない。また、親会社TKOがスタッフたちにドライな態度を取っていることも、「いずれAIがクリエイティブを侵食する」という不安につながっている…。一部のプランをトップシークレットで進めるのはHHH体制の特徴の一つですが、それが現場に不信感を与えている側面もあるようです。
また、ライターを志す人物は、通常アシスタントとして経験を積んでから大きな仕事を任されるのがこの世界の常識でした。しかし、AIが新人のポジションを奪うことになれば彼らが経験を積む場もなくなってしまいます。この点にも懸念があるようです。
現時点で、WWEが採用している生成AIの品質は論外(ビンス・マクマホン時代の情報を学習させているため、時代にそぐわない)で、それが原因で現場でのAI活用が進んでいないといいます。しかし、技術の進歩や更に多くのインプットを与えることで品質が向上していくのは確実。WWEのAI活用はプロレス界のクリエティブのあり方や雇用の未来を反映するかもしれません。
(Wrestling Observer, WrestlePurists)
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