WWEを揺るがしたビンス・マクマホンのスキャンダル。
ウォール・ストリート・ジャーナルは2ヶ月連続でスクープを飛ばし、WWEに大きな影響を与えています。スクープがきっかけでNetflixは製作途中だったビンスのドキュメンタリーをキャンセルし、ビンス自身もバックステージでこの話題について触れようとしていないようです。
Podcast番組「Busted Open Radio」は、スクープを飛ばしたウォール・ストリート・ジャーナルのレポーターであるジョー・パラッツォーロとテッド・マンをゲストに招き、このスキャンダルについて逆インタビューを敢行しました。
パラッツォーロによれば、彼らがビンスの話を初めて聞いたのは2022年4月のこと。ビンスが不倫相手の女性に支払った300万ドルの口止め料について、WWE役員会が調査していることを情報源から聞いたのだそうです。2人は、それから記事を発表する6月までの間に取材を重ね、役員会の調査内容を調べました。
このスキャンダルを報じた理由について、パラッツォーロは次のように答えています。
まず第一に、ウォール・ストリート・ジャーナルは公開会社(不特定多数の人々が株式を保有する会社)をカバーしているんだ。WWEは公開会社で、この件は明らかにガバナンスの問題だった。我々が書く記事は投資家に向けられたもので、もしWWEに投資している人たちが役員会による調査の事実を知ったら、かなり面白い状況になるだろうと思った。
役員会のメンバーは12人いて、4人は団体内部から、8人は外部から参加している。結局のところ、WWEはビンスがコントロールする会社なんだ。ガバナンスの問題があるだろう。読者には、何が起こっているのかを理解してもらうことが重要なんだ。この疑惑については、団体が「合意の上での不倫だった」と言っている一方で、そうではないケースがあることを知っていたんだ(これまでに報じられている件では、元女性選手がビンスから性交渉を強要され、関係の継続を拒んだことで契約を解除されたという疑惑がこれにあたると思われる)。そうした話も報じなければならないと感じているよ。
また、マンは、WWEという団体の構造や、そこで起きた「力の不均衡」の危険性を語りました。
団体が合意の上だったと言っているとしても、その人の生活は上司の機嫌を取り続けることにかかっているような状況だった。こうした力の不均衡がもたらすリスクは、本当はやりたくないことだとしても、生活のためにはやらざるを得ない……という状況を生み出しかねない。そのうえ、そうしたことが団体のトップの周辺で起きているんだ。
その関係は社内に知れ渡っていて、彼らはその様子を見ているわけだが、そうした状況でも常に「トップの姿勢」を意識しなければならない。これは現実に起きていたことなんだ。もし、会社の最高経営責任者が、このような行為を許し、それに関与・先導しているとしたら、それは会社全体の問題なんだよ。
また、マンは、上述の元女性選手に対して支払われた750万ドルという口止め料が、彼女と同様に口止め料を受け取った女性たちと比べて突出した金額であることから、「真相を突き止めなければならない」と思ったといいます。その結果、ビンスが元女性選手に性行為を強要したという疑惑にたどり着いたわけです。
多くのファンがこのスキャンダルに驚いた一方で、中には「ビンスのキャラクターを考えれば、驚かない」というリアクションを取ったことについて、マンはダン・スナイダーという男を引き合いに出して「あの件よりも盛り上がりに欠けるのは興味深い」とコメント。スナイダーはNFLワシントン・コマンダースのオーナーで、彼や球団の幹部、選手たちが40人以上の女性従業員たちに対してセクハラや差別的発言をしてきたことが2020年に報じられ、大きな話題になった人物です。
2人はこれからも取材を続けていく姿勢を取っています。選手たち、投資家たちがスキャンダルについてどう思うか?それは、ビンスの豪腕でもコントロールできない部分でしょう。
(Fightful)