新日本プロレスワールドの英語実況アナウンサーとしても活躍したケビン・ケリー、そしてダルトン・キャッスルのThe Boysとして知られるテイト・ツインズが連名でAEWを相手取って起こした訴訟。
AEWがレスラーたちを「個人事業主」ではなく「従業員」として扱うことや、AEWのタレント契約に含まれる仲裁条項(紛争を裁判所ではなく仲裁で解決することを要求する条項)の無効化の要求をはじめ、ROHの実況アナウンサーを務めるイアン・リッカボーニによるケリーへの誹謗中傷、AEWから解雇されたことによる金銭的困難に対する賠償請求、AEWによるテイト・ツインズへの「不当解雇」……この訴訟の内容は複雑です。
レスリング・オブザーバーのデイブ・メルツァーによれば、この訴訟に関わっている弁護士の1人は、CMパンクの代理人として知られるスティーブン・P・ニューなのだそうです。彼はジム・コルネットの弁護士でもあります。
また、メルツァーは、この訴訟が2022年9月1日以降にAEW/ROHと契約したすべての人物を巻き込もうとしていているのではないか、と推測。主張の中に、「AEWがタレントとレスラーの衣装、リング内でのレスラーのパフォーマンス、サービスの時間と場所、レスラーやタレントの発言と行動を管理している」という内容が含まれており、これが訴訟の焦点になる可能性があるようです。
「AEWがレスラーたちを『個人事業主』ではなく『従業員』として扱うことへの要求」に関しては、原告はAEWに対して「レスラーたちに労災補償や健康保険、社会保険を提供すること」を求めているようです。メルツァーは、この主張がこの訴訟の最大の問題だと指摘しています。
AEWはWWEよりもレスラーたちの独立性が高く、他団体に出場することが可能です。ただし、彼らが他団体へ出場するにはAEWの許可が必要になります。彼らが「個人事業主」と「従業員」のどちらとして扱われるべきなのか…。これはAEW固有の問題ではなく、プロレス界で長年に渡って議論されてきたことでもあります。
とはいえ、アメリカのプロレス界では今回のような訴訟が過去にも何度か話題になったことがあり、「訴訟は裁判所から却下される可能性が高い」と考える人が多いようです。メルツァーは、
AEWは、訴訟を引き伸ばす作戦を取り、訴訟コストを引き上げることで原告に経済的負担をかけることで、訴訟の進行を困難にすることもできる。もちろん、最初のステップは、裁判所に対して「この訴訟は軽薄なものだ」と示し、訴訟の却下を求めることだろう。
と指摘しています。
(Wrestling Inc)