常に進化を続けるプロレス界。特に、ここ10年程度の進化は目覚ましいものがあります。
試合の質が向上したことはもちろん、SNS時代ならではのストーリーの構築や、観客が海外のプロレス情報を理解していることを前提とした抗争が展開されるようにもなりました。今後も進化は続くでしょう。
「進化」という点で、多くのレジェンドレスラーたちが現役レスラーたちへの警鐘として「ストーリーテリングの重要性」を語ってきました。技を軽視してはいけない、何よりも大事なのはストーリーテリングだ…。
WWE殿堂入りレスラーのアンダーテイカーは、出演した番組内で「ストーリーテリング問題」についての持論を語りました。ストーリーテリングが軽視され、ファンからの反応を得るために危険な技が使われる…そうした状況に懸念を持っているようです。
プロレスは、今と昔じゃまったくの別物になったね。
今の選手たちの運動能力は想像を超えているよ。子供の頃にプレイしていたゲームの影響なのか、リング上でゲームのようなことをやっているよな。
でも、これは諸刃の剣かもしれない。彼らは自分たちの運動能力に頼りすぎて、我々の仕事で最も重要な要素……つまりストーリーテリングを忘れてしまっている。WWEの上層部の人間にもこの意見を伝えたんだけど、「一度出した歯磨き粉は元に戻せない」と言われたよ。でも、いつかは元に戻す方法を見つけなければならないと思う。
何より、彼らの健康が心配だ。よく言うんだが、プロレスの試合はとても危険で、常に大惨事が起こる可能性がある。観客の反応を得るために選手たちがやっていることは、必要以上に危険なものだ。
ファンは過激な技に慣れてしまう。トップロープから二回宙返りしてフロアに着地する技を初めて見た時に感動したとしても、同じ技何度か見たら、「次は何だ?」 ってことになるんだよ。だから、選手たちは「反応を得るには何をすればいいか?」と考えて、どんどんエスカレートしていく。
今のビジネスは好調だから、彼らを批判するのは難しい。今は彼らの時代だしね。でも、長年この業界にいて、プロレスが身体へ与える影響も知っている。「お前たちには我々のような長いキャリアは望めないぞ。燃え尽きるか、怪我をするかだ」と言いたくもなるよ。
(Bad Bloodのローマン・レインズ&コーディ・ローデスVSジェイコブ・ファトゥ&ソロ・シコア戦で、ヘッドロックでファンを興奮させていたシーンがあったことについて)ファンは夢中になっていただろ?それが重要なんだ。クレイジーな後方二回宙返りでフロアに着地するような技をやったら、本当ならしばらく立ち上がれないはずだろ?
我々はこの業界を愛し、成長し続けてほしいと思っている。でも、我々には何年もの経験がある。怪我の恐ろしさも十分に知っている。
この業界がどれだけ続こうと、その本質は常に優れたストーリーテリングだ。プロレスは技の見せ合いじゃない。ストーリーテリングなんだ。我々は技を使ってストーリーを伝える。でも、すべてがそれに集約されるわけじゃない。技は、AとBの対立や、その背景にある物語を伝えるための道具に過ぎない。
(Fightful)