レジェンドたちが現在のプロレス界を語る時、「長期的なストーリーテリングが失われている、あるいはうまくいっていない」と語ることは珍しくありません。
先日はテディ・ロングがWWEについて語る時に「ストーリーが完結しないまま、また別のストーリーが始まる。長期のストーリーテリングが機能していない」と批判的にコメントしていました。同じ事を考えるレジェンドは少なくないでしょう。

ストーリーテリングはプロレスにおいて常に重要な要素であり、中核をなす要素と言えるでしょう。そして、そのストーリーを語る方法は無数に存在します。プロレスの他のあらゆる要素と同様、それも時代と共に変化し、長期的なストーリーラインは、ファンにとって素早い結末が用意された短期的なストーリーラインへと取って代わられてきたのもまた事実です。
AEWのベテランレスラーMVPは、自身のPodcast番組でプロレス界の変化を認めつつも、長期的なストーリーラインがどこにも行くことはないと確信していると語りました。
端的に言って、プロレス界が変化したのは事実だ。現代人の集中力は著しく低下し、すべてが「今、今、今」……。短い切り抜き動画やTikTokが大きな影響力を持っている時代だよ。誰もがより短いもの、要点だけを求めている。
だが、何があろうとも、人間は今でも良い物語が大好きなんだ。そして、長期的なストーリーテリングがが正しく行われ、すべての要素が揃っていれば、多くの人たちがそれを追いかけることになるだろうね。
エンターテイメントに対する人々の飽くなき渇望がある限り、長期ストーリーが消え去るとは思わない。プロレスというものはたとえ「今すぐ欲しい。今すぐ結末を」といった態度を持つ新しくて若いファンが見ていたとしても、ストーリーテリングが正しく行われれば機能するんだ。
だから、プロレスから長期的なストーリーテリングが完全に消え去るとは思わない。正しく行われる限りはな。そして、それを得意とする特定の人間もいれば、それが得意でない、あるいは気にもかけない人間もいる。それもまた事実だね。
でも、俺は..じっくりと燃え上がるようなストーリーの大ファンなんだ。そして、それこそがプロレスの本質的な部分だと思う。対立を築き上げ、それを進展させ、クライマックスの結末で最高潮に達するようにしなければならない。それを1ヶ月かけてやろうが、1年かけてやろうが、正当な確執を持つ魅力的なキャラクターさえいれば…。
俺はいつも「感情的な反応を引き出すこと」の大切さをみんなに伝えてるよ。もしファンが感情移入していれば、次に何が起こるか見たいから、チャンネルを合わせ続けることになる。それがプロレスの醍醐味だね。
WWEではBloodlineが、AEWではジョン・モクスリーがハングマン・アダム・ペイジに敗れるまでのストーリーが「長期的なストーリーテリング」に該当するでしょう。今もこうしたストーリーはファンを魅了し続けていますし、今後もそれは変わらない。MVPはそう信じています。
(Wrestling Inc)
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