AEWのトニー・カーン社長は、団体のプロダクトに関するほぼすべての決定権を持っています。彼が許可しないものは基本的に表に出ることはありません。
AEWはレスラーにクリエイティブの自由を持たせるスタイルの団体なので、レスラーたち自身の判断で表現したものが問題になることはありますが、基本的にはAEW=トニー・カーンです。つまり、毎週100万人程度の視聴者が見る番組を制作し、多くのスタッフを抱える団体を実質ワンマンで切り盛りしている、ということ。それに加えてサッカープレミアリーグのフラムFCやNFLのジャクソンビル・ジャガーズの共同オーナーも務める彼は業界屈指の忙しい人物です。
そんな彼から団体外部の人物へ直接連絡が来るのは珍しいケースかもしれません。新日本プロレス所属で、団体の海外戦略のキーパーソンの1人であるロッキー・ロメロは、トニーが2022年3月にROHを買収した後、彼に謝罪があったことを明かしました。「事前に伝えられていなくてごめん」という趣旨の謝罪です。
ニュースが流れて、「マジかよ、トニーがROHを買収か」って思ったんだよね。それから30分後にトニーからメッセージが届いて、謝罪されたんだ。「なあ、情報を共有できていなくてすまなかった。ギリギリのタイミングだったんだ」って感じの内容だったかな。それで、「(ROHの買収は)君に事前に伝えておきたかったことだったんだけど…。とはいえ、ROHを買収したのは俺なわけだけら、我々は何かしら動いていくつもりだ。願わくば、いつかROHと新日本プロレスでコラボレーションしたいね」って。俺は「それ、やべえじゃん」って返した。
衝撃的なニュースだったけど、買ったのがトニーで良かったよ(WWEも買収に動いていたと報じられていた)。ROHの豊富なビデオライブラリーは良き人の手に渡ったと思ってる。ROHの歴史は、それを適切に扱うことができる人に委ねられることになったわけだ。それってすごく重要なことだと思うよ。
トニーと直接話したり、インタビュー記事を読んだりした感じでは、これからのROHはNJPW STRONGのようなブランドになるらしいね。若手にフォーカスし、将来的にはAEWのロースターに加われるような逸材たちに活躍を機会を与える、と。すごくクールなことだと思うし、ROHってのは元々そういう団体だからさ。ROHからはいつの時代も素晴らしいレスラーたちが巣立っていった。そうしたレガシーがこれからも残るのはとても良いことだよ。